2018-06-17 13:45:48 ICT
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振り返って、私はスマホを持っていない。不安と驚きがない旅は無味乾燥に思うからだ。コミュニケーションに四苦八苦し、初めての都市ではまず途方に暮れる。郊外のバスターミナルから市街中心にたどり着くまでが一苦労であるが、これがまた楽しい部分でもある。とはいえ、20年前の旅のスタイルを維持することは不可能だ。昔は情報は宿で得た。もしくはタクシー(バイタクやトゥクトゥクも含む)ドライバーから得た。宿には宿泊者ノートがあり、そこには訪れた旅人たちの感想が細かに書かれていた。旅の経路やおすすめの観光スポット、交通事情などがみっしりと書き込まれており、それを読むのも楽しかった。タクシードライバーはノートを持っていた。そこにもやはり、旅行者の感想が書き込まれていた。「このドライバーは信用できる」や「宿までぼったくらずに連れて行ってくれる、親切」などといろんな言語で書かれていた。当のドライバーはノートに何が書かれているのかを理解していないであろう。しかしながら、彼らに取ってはこのノートが信用の源泉であり営業活動なのだ。バスが到着すると客引きのドライバーがノートを見せながら、「俺に任せろ」とアピールする。ノートを読み利用後は私もノートにメモを書き込んだものだ。次に利用する旅行者のためを思って。今や、すべての情報はネットにある。宿ノートもドライバーノートもなくなってしまった。宿のレビューやクチコミ情報はネットで確認できるし、タクシーの標準的な金額もネットで調べることができる。情報のありかが、宿や案内所からネットに移った以上、旅人もスマホを待たざるを得ない。